ゲイル・サラモン『身体を引き受ける』

ゲイル・サラモン(藤高和輝訳)『身体を引き受ける−−トランスジェンダーと物質性(ルビ:マテリアリティ)のレトリック』以文社、2019年

原著は以下。
Salamon, Gayle. Assuming a Body: Transgender and Rhetorics of Materiality, New York, NY: Columbia University Press, 2010.

要約

精神分析学や現象学、フェミニズム/クィア理論、そしてトランスジェンダー・スタディーズ。それぞれの学問分野は、ジェンダー化された身体性(それが男性と女性の二元論を超えたものとして身体化され、生きられていることは言うまでもない)をどのようなものとして捉え、理解してきたのか。そこにはどのような問題・課題があったのか。そして、それらがトランスジェンダーの身体および主体性の理解・説明にとって「有用」なものとなるためにはどのような視点・構えが必要なのか。身体性を物質性に安易に還元して理解したり、すでに身体化され生きられているジェンダーを無視・軽視したり、非規範的なジェンダーを病理的なものとみなしたりするのではなく、「物質的な身体」(外側から知覚・観察される身体)と「感じられる身体」の間の不確実な関係を、これまでとは異なる新たな見方・説明にひらいていこうとする意欲作。

付記:フェミニズムとトランスジェンダーの関係に関心をもっている人は第II部を読むとよい。ジェンダー化された身体に関するフェミニズム理論に親しんでいる人は第III部の議論を楽しめるだろう。

目次

序論 3

第I部 身体とは何か?

第1章 身体自我と物質的なものという不確かな領域 21

第2章 性的図式−−『知覚の現象学』における転位とトランスジェンダー 69

第II部 ホモエラティックス

第3章 ボーイズ・オブ・ザ・レックス−−トランスジェンダーと社会構築 109

第4章 トランスフェミニズムとジェンダーの未来 151

第III部 性的差異を超えること

第5章 性的差異のエチカをトランスする−−リュス・イリガライと性的未決定性の場 211

第6章 性的無差異と限界の問題 233

第 VI部 法を超えて

第7章 文字=手紙(ルビ:レター)を保留すること−−国有財産としてのセックス 275

原注 312

参考文献 323

謝辞 336

訳者解説 341

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