「男らしさを競う文化」をどう特定するか

組織変革のためのダイバーシティ(OTD)研究のための研究メモ。

企業で違法行為やハラスメント、有害なリーダーシップといった問題が生じる理由のひとつとして、「男らしさを競う文化」を指摘した研究がある。これは、私の専門であるジェンダー研究と、現在取り組んでいる組織変革のためのダイバーシティ研究の両方に関わる興味深い研究なので、少し研究メモとしてまとめておきたい。

研究メモ:

1.「男らしさを競う文化(MCC)」を構成する4つの要素

  1. 「弱みを見せてはならない」(Show no weakness):尊大なまでの自信がなくてはならず、疑念や過ちを認めず、ソフトな感情や弱い感情を抑圧する職場(「女々しいのはダメ」など)
  2. 「強さと強靭さ」(Strength and stamina):ホワイトカラーの仕事であっても、力が強い人や体育会系の人、自分の持久力を誇示する人(長時間働くなど)が称賛される職場
  3. 「仕事最優先」(Put work first):組織外のいかなるもの(家族など)も、仕事の邪魔をしてはならないとされる職場。休憩や休暇を取ることは、コミットメントの欠如と見なされる職場 
  4. 「弱肉強食」(Dog Eat Dog competition):非情な競争にあふれ、「勝者」(最も男性的な人)が「敗者」(あまり男性的でない人)を負かすことに力を注ぐ職場

参考文献:

2.Masculinity Contest Culture (MCC) scale :MCCの4つの要素に関連した20項目の質問

1)「弱みを見せてはならない」(Show no weakness)

  • Admitting you don’t know the answer looks weak.
  • Expressing any emotion other than anger or pride is seen as weak.
  • Seeking other’s advice is seen as weak.
  • The most respected people don’t show emotions.
  • People who show doubt lose respect.

2)「強さと強靭さ」(Strength and stamina)

  • It’s important to be in good physical shape to be respected.
  • People who are physically smaller have to work harder to get respect.
  • Physically imposing people have more influence.
  • Physical stamina is admired.
  • Athletic people are especially admired.

3)「仕事最優先」(Put work first) 

  • To succeed you can’t let family interfere with work.
  • Taking days off is frowned upon.
  • To get ahead you need to be able to work long hours.
  • Leadership expects employees to put work first.
  • People with significant demands outside of work don’t make it very far.

4)「弱肉強食」(Dog Eat Dog competition)

  • You’re either “in” or you’re “out,” and once you’re out, you’re out.
  • If you don’t stand up for yourself people will step on you.
  • You can’t be too trusting.
  • You’ve got to watch your back.
  • One person’s loss is another person’s gain.

参考文献:

4つの要素は日本企業にもある程度あてはまりそうだが、質問項目の中にはそのまま使いづらいものがある。たとえば、日本の職場において期待される「強さと強靭さ」は、身体的なものというよりは精神的なもの(たとえば「根性がある」や「へこたれない」など)が大きいように思う。したがって、体格と周囲からの評価の関連を見る2つの項目(小柄な人が尊敬されるためには、そうでない人よりも一生懸命働かなくてはいけない;体格のよい人は、 より大きな影響力を持つ)は、日本企業を対象に調査を行うなら、別の質問に置き換えた方がよいように思う。

また、一般的に、欧米と日本では経営環境に違いがあるとされる(たとえば、欧米は「競争主義的」、日本は「家族主義的」など)。これら違いをふまえた時、日本企業に特徴的に見られる要素を追加する必要がありそうだ。

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