堅田香緒里『生きるためのフェミニズムーーパンとバラと反資本主義』(タバブックス、2021)
I「パンとバラのフェミニズム
IIIの「ジェントリフィケーションと交差性ー日常の抵抗運動」では、横浜の寿町や黄金町の歴史と「浄化」の背景(pp. 98〜112)が描かれ、ジェントリフィーケーションが次のように説明される。
ジェントリフィケーションとは、資本の「再開発」によって都市の貧困地域の地価が高騰し、その結果貧困層が都市を追われるという現象を指す。(中略)スコットランド出身の地理学者ニール・スミスは、ジェントリフィケーションが、文化やアートではなく
p. 113資本の論理によって
駆動されることを論じている。それは、建造物そのものだけではなく貧しい労働者の地理と歴史をも塗り替えてしまう。この意味でジェントリフィケーションとは、決して階級的にニュートラルな再編過程ではない。それはむしろ、階級的対立を背景に労働者階級の文化・生活・地理を、ミドルクラスのそれに置き換えようとする暴力なのである。
ここで引用されているニール・スミスの本は『ジェントリフィケーションと報復都市:新たなる都市のフロンティア』(原口剛訳、ミネルヴァ書房、2014年)
こうしたジェントリフィケーションへの抵抗運動として、本書が紹介するのが、ベルリン北西部のウェディング地区にある「ヒンメルベエット(天国のベッド)」と名づけられたコミュニティ・ガーデン(pp. 124〜127)、ロンドン北部のハーリンゲイ区に位置するワーズ・コーナーでの「ロンドン・ラティンクス(The London Latinxs)(pp. 141〜147)の取り組みである。
なお、本書が依拠する、ジェントリフィケーションやそれへの抵抗運動に関する情報は、反ジェントリフィケーション情報センターのサイト(https://antigentrification.info/)や、サイト中の下記記事に詳しい。
- 村上潔「ロンドンの若きラテンアメリカ系フェミニストは『ジェントリフィケーションに抵抗せよ!』と叫ぶ」(2017年7月1日)
また、日本におけるジェントリフィケーションに対する抵抗として、「宮下公園を『ナイキ化』から守ろうとした占拠闘争」(p. 115)や「反五輪の会」の闘争(p. 115)が紹介されている。
前者については「ねる会議」のサイト(https://minnanokouenn.blogspot.com/)、後者については「反五輪の会」サイト(https://hangorin.tumblr.com/)が詳しい。