編著者
川越敏司・川島聡・星加良司
目次
序章 障害学の「リハビリテーション」という企て 川島聡・星加良司
そもそも社会モデルとは何か。これ自体が問われるべき大きな論点であり、本書で扱われる重要な検討対象でもある。社会モデルが、英国障害学ではマイケル・オリバーが最初に提起した視点(Oliver 1983)であることは、日本でも広く知られているが、そもそも社会モデルの概念については、英国流と米国流との間に違いがあることを含め(杉野 2007、川島 2011)、さまざまな理解がある。そのことを踏まえた上で、とりあえず最大公約数的な特徴を示すならば、社会モデルとは「インペアメント」(普通とみなされていない心身の特徴)と「ディスアビリティ」(社会的不利)を分析的に区別した上で、「ディスアビリティ」の社会構築性に焦点を合わせる視点である、と言えよう。
p. 8
第I部 基調論文とコメント−−社会モデルの分析と障害学への処方
第1章 社会モデルの分岐点−−実践性は諸刃の剣? 星加良司
上記の例のように、社会モデルに基づく説明が利用されるのが、社会の側にある障壁(エレベーターの不在や教育提供者の差別的態度等)と障害者の被る不利益との対応関係が比較的見えやすい問題であり、しかもその解決策が明確に示されうるようなケースに偏っていたことによって、そうした具体的で個別的な問題への処方箋を与えるもの、あるいはそのために有効なレトリックとして、社会モデルを理解している人は意外に多い。しかし、上で確認したように、社会モデルによって焦点化される「社会」とは、何も個々の障害者が直面している個別的な社会的場面だけではなく、その背後にある福祉国家システムや市場経済システムをも含むものである。
p. 24
コメント 障害学とジェンダー論と 菊地夏野
第2章 障害の社会モデルと集団的責任論 川越敏司
コメント 〈個人〉対〈社会〉の対立モデルからの脱却−−「アファーマティブ・アクション論」による障害の社会モデルの復権 後藤吉彦
第3章 権利条約時代の障害学−−社会モデルを活かし、超える 川島聡
コメント 障害者権利条約実行のツール−−社会モデルか統合(ICF)モデルか 佐藤久夫
第 II部 ディスカッション−−「社会」に開かれた障害学の可能性
飯野由里子/川越敏司/川島聡/杉野昭博/中根成寿/星加良司