『クィア・スタディーズをひらく−−アイデンティティ、コミュニティ、スペース』序章(pp. 1-14)
要約
クィアとは、その社会において規範的とされる性のあり方から外れている人々を「異常」な存在として他者化するとともに、人びとを規範的なあり方に自ら同化していくよう仕向ける機能をもつ言葉だった。だが、1980年代のエイズ危機を経由した新しい性的マイノリティの運動で、この言葉はメインストリームへの抵抗的なスタンスを指し示す言葉として採用された。これにより、クィアは相矛盾する複数の意味をもつ言葉として使用されるようになった。本シリーズでもクィアは少なくとも二つの意味合いをもつ言葉として登場する。第一に研究の対象としてのクィアであり、第二に視点としてのクィアである。とりわけ重要なのが後者であり、これは、特定の性のあり方のみを「ノーマル」とみなし、それ以外のあり方を「逸脱」とし他者化する思考枠組みを批判的に検討・解体する視点のことを指す。
ディスカッション・ポイント
- 「特定の性のあり方のみを「ノーマル」とみなし、それ以外のあり方を「逸脱」とし他者化する思考枠組み」にはどのようなものがあるか?
- そこにジェンダーやエスニシティ、経済的格差(貧困)の問題はどのように交差(インターセクト)しているか?
コメントを残す